iDeCoの受け取り方は3パターン。税金の違いを先に知っておく
iDeCoで積み立てた資産は、原則として60歳以降に受け取ります。主な受け取り方は、次の3つです。
- 一時金としてまとめて受け取る
- 年金として分割で受け取る
- 一時金と年金を組み合わせて受け取る
どの受け取り方が有利かは、iDeCoの残高、会社の退職金、公的年金の見込み額、退職時期、ほかの所得、家族構成などによって変わります。単純に「一時金が得」「年金が得」と決めつけることはできません。
一時金で受け取る場合は退職所得控除の対象
iDeCoを一時金で受け取る場合、税制上は退職所得として扱われ、退職所得控除の対象になります。国税庁の説明では、退職所得控除額は勤続年数に応じて計算されます。iDeCoの場合は、一般的に掛金の拠出期間が勤続年数に相当するものとして扱われます。
| 勤続年数・拠出期間 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 年数(80万円未満の場合は80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(年数 − 20年) |
退職所得は、原則として「収入金額 − 退職所得控除額」の残額に2分の1をかけて計算します。退職所得控除が大きいため、一時金受け取りは税負担を抑えやすい場合があります。
ただし、会社の退職金とiDeCoの一時金を近い時期に受け取る場合は注意が必要です。同じ年や近い年に複数の退職金を受け取ると、退職所得控除の計算が変わることがあります。
2026年1月から退職所得控除の「5年ルール」が「10年ルール」へ
2026年改正で特に注意したいのが、iDeCoなどの確定拠出年金を一時金で受け取った後に、会社の退職金を受け取るケースです。従来は、iDeCoの一時金を先に受け取り、一定期間を空けて会社の退職金を受け取る場合の調整期間が「前年以前4年以内」、いわゆる5年ルールとして扱われていました。
令和7年度税制改正により、この調整期間が「前年以前9年以内」、実務上は10年ルールと呼ばれる形へ見直されています。2026年1月1日以後にDC一時金を受け取り、その後に退職金を受け取る場合は、受け取り時期によって退職所得控除が十分に使えない可能性があります。
たとえば、60歳でiDeCoを一時金で受け取り、65歳で会社の退職金を受け取るようなケースでは、改正後のルールに注意が必要です。会社の退職金制度が何歳で支給されるか、iDeCoを何歳で受け取るかを、早めに確認しておくことが大切です。
年金で受け取る場合は公的年金等控除の対象
iDeCoを年金形式で分割して受け取る場合は、公的年金等控除の対象になります。毎年少しずつ受け取れるため、老後の生活費に合わせやすい一方、公的年金や企業年金など他の年金収入と合算される点に注意が必要です。
公的年金が多い人、企業年金がある人、退職後も働いて収入がある人は、年金形式で受け取ることで課税所得が増える場合があります。逆に、一時金で受け取ると退職金と重なって退職所得控除を使い切れない場合は、年金との併用を検討する余地があります。
iDeCoを始める前に確認したい3つのこと
1. 生活防衛資金を先に確保する
iDeCoは老後資金づくりに向いた制度ですが、原則として途中で自由に引き出せません。失業、病気、家族の介護、住宅修繕などに備える現金が少ない状態で掛金を増やしすぎると、急な支出に対応しにくくなります。
まずは普通預金などで生活費の数か月分を確保し、そのうえで余裕資金から掛金を決める考え方が現実的です。
2. 掛金は「節税額」より「続けられる金額」で決める
iDeCoは掛金を増やすほど所得控除の金額も大きくなります。ただし、掛金を増やせば、その分だけ手元に残るお金は減ります。2026年改正で上限が広がる人でも、上限いっぱいまで掛ける必要はありません。
毎月5,000円から始め、家計に余裕が出たら増額を検討する方法もあります。掛金額は原則として年1回変更できますが、手続きには時間がかかる場合があります。
3. 退職金と受け取り時期を一緒に考える
iDeCoは始めるときの節税効果に注目されがちですが、最後に重要になるのは受け取り方です。退職金がある会社員・公務員の場合、iDeCoの一時金と退職金の受取時期が近いと、退職所得控除の調整により税負担が変わることがあります。
50代以降でiDeCoを検討する場合は、勤務先の退職金制度、定年年齢、再雇用後の退職金支給時期、企業型DCの有無もあわせて確認してください。必要に応じて、税理士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのも選択肢です。
最後に確認したいポイント
iDeCoは、掛金の全額所得控除、運用益の非課税、受け取り時の控除という税制優遇がある制度です。2026年改正では、拠出限度額の引き上げや70歳になるまで拠出できる方向が示されており、これまでより活用の幅が広がる可能性があります。
一方で、iDeCoには手数料があり、運用商品によっては元本割れのリスクもあります。また、受け取り時には一時金、年金、併用のどれを選ぶかによって税金が変わります。2026年1月からの退職所得控除の10年ルールも、退職金がある人にとっては重要です。
まずは自分の加入区分、掛金上限、手数料、退職金の有無、受け取り時期を確認し、無理のない金額で長く続けられるかを考えることが大切です。節税だけでなく、老後資金全体の設計としてiDeCoを位置づけると、制度をより納得して活用しやすくなります。
出典:iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会) / iDeCo加入手続きについて / iDeCoのライブラリ / 厚生労働省「iDeCoがパワーアップします!」 / 厚生労働省「私的年金制度、iDeCoの改正のポイント」 / 国税庁「小規模企業共済等掛金控除」 / 国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
